ブランド牛が集う東京で和牛を食べ比べる至福
近年「和牛」は世界の共通言語となったと言っても過言ではないでしょう。やわらかな赤身と霜降り(サシ)と呼ばれる網目状に入った脂身が魅力の和牛。上質な霜降り(サシ)は融点が低く、口にした瞬間にとろけ、滑らかな食感とともに特有の甘みと旨みが口いっぱいに広がります。和牛を体験した人は、その重層的な味わいの奥深さに驚きます。この衝撃的な美食体験を訪都の目的にする旅行者も少なくありません。
肉の専門家である小池克臣氏は「東京は、和牛を味わうのに最適な場所」と話します。それはなぜなのか。小池氏の分析に耳を傾けてから、実際に東京で和牛を味わい、その真髄に触れてみませんか。
世界中の美食家を虜にする「和牛」の魅力とは?
「和牛」という名称は牛の品種を指す言葉で、日本の在来種をもとに品種改良し、飼育されている4種類の食肉用品種のこと。黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の4品種だけが、和牛という名称を使用できます。
日本で飼育される和牛の9割は黒毛和牛で、肉質や霜降り(サシ)の入り具合、香りなどが食用として非常に優れているとされます。有名ブランド牛として名高い、松阪牛、神戸ビーフ、近江牛、米沢牛などもこの品種です。
“肉の専門家”として知られる小池克臣氏は、和牛の魅力を熱く語ります。
「和牛は霜降り(サシ)が豊富なだけでなく、全身の肉質もやわらかく、溶けるような食感が味わえます。また、内臓も含めあらゆる部位をまんべんなく食べられるのも特徴です。部位によって肉質が大きく異なりますから、それぞれの部位の香り、食感、旨みの違いを食べ比べるのも楽しいですね。中には希少な部位もあり、その味わいは、これまで和牛を食べたことがある人でも驚きをもって、和牛の魅力を再認識できるはずです。和牛の味を知って心を奪われた知人の中には、和牛を目的に年に何度も来日する人もいます。近年は海外からのアテンド依頼もあり、和牛が世界的に憧れの食材となっているのだなと実感しています」。
和牛の本質が味わえる、日本ならではの食文化
肉の専門家である小池克臣氏は、さまざまなメディアで和牛の魅力を発信し続けています。
小池氏は、年間200食の肉料理を食べ、肉の生産工程、加工・熟成の方法、おいしい焼き方や食べ方に至るまでを研究する“肉の専門家”。魚屋を営む出身ですが、自らを“肉バカ”と称するほど肉に心酔しています。毎日食卓に魚が並ぶ生活を送る中、18歳のときに自身のアルバイト代で焼肉を食べたことをきっかけに、「肉の世界に目覚めました」と笑顔で振り返ります。肉の話題に特化したブログを立ち上げ、自分が肉について学んだことや経験を発信したところ、その確かな知識と目利きが評価され、食肉業界とのつながりを強くしていきました。現在も本業の会社勤めと並行しつつ、SNSなどで情報発信を継続中。食肉業界でアドバイザーとしても活躍しています。
そんな和牛を知り尽くした小池氏は、和牛ならではの魅力を探求する中で、「日本独特の肉の調理法や味わい方が、和牛のおいしさを引き立てている」と指摘します。「たとえば、肉を薄切りにするという加工法。海外のスーパーでは、牛肉は一般的に厚切りで売られており、和牛も海外のレストランでは厚切りの状態で提供されることがあります。ただ、和牛は脂肪が多いだけに、それだと少々重く感じてしまうこともある。一方、日本では焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶといった料理で、薄切り肉を楽しむのが主流。薄切り肉を使うメニューは、和牛本来の繊細なおいしさを際立たせるのに最適です。また、内臓を食べる食文化も、和牛のあらゆる部位を、その味を比べるように味わうという楽しみを支えています。日本の多彩で優れた加工技術、調理技術によって、タンや内臓も食べるという食文化が定着したわけですが、これが普段内臓をあまり食べない訪日旅行者に注目されているという側面があります。総じて、日本の調理法が和牛ならではの味わいを表現することに繋がっていると、私は思います」。
ブランド牛が集まる街。東京で和牛を食べるべき理由
和牛のおいしさを支えているのは、ブランドを守る厳格なルールの順守と、歴史に裏打ちされた独特の飼育法へのこだわりです。
誰しも一度は耳にしたことがあるであろう、松阪牛、神戸ビーフ、近江牛、米沢牛といった、和牛のブランド名。これらは「ブランド牛」と呼ばれ、全国各地に300種類以上存在しています。それぞれが厳格な規定のもとで飼育されていて、種付けから出荷までに約3年の時間を要します。いずれも量産が難しく、和牛の世界的な評価やニーズの高まりとともに、年々希少性も高まっているというのが現状です。そんな希少な全国の和牛が、一堂に会する場所があります。それが東京です。
「希少なブランド牛が集まる場所だからこそ、東京では多彩な食の体験ができる」と小池氏は語ります。
「東京には、全国各地から良質な牛肉が集まり、畜産農家、加工・流通業者が出入りする日本最大級の市場、東京都中央卸売市場食肉市場があり、連日、日本中からたくさんの良質なブランド和牛が集まってきます。そして、地方市場に比べ、遥かに大規模な取引が行われることになります。また、東京は有名店の仕入れを担う業者や目利きが集うことから、ブランド牛の品質や価値が測られる中心地ともいえる場所で、国内の和牛の流通のハブとしても機能しているのです」。
さらに小池氏は、東京産のブランド牛にも注目していると言います。
「西東京の自然豊かなエリアにあるあきる野市秋川では『秋川牛』というブランド牛を飼育しています。黒毛和牛の中でも最高ランクに相当する肉質を誇り、その希少性から『幻の東京和牛』とも呼ばれています。地産地消の観点からも注目されていますから、今後の知名度アップに期待しています」。
多様な肉料理、肉の部位を食べ比べ、和牛を満喫する
小池氏は、東京で和牛を味わえるレストランの現状について「国際的な美食ガイドで星付きの評価を得たレストランも多く、和食、イタリアン、フレンチなどさまざまなジャンルの店で、趣向を凝らした料理に出会えるはず」と語ります。「特に和牛に強い思い入れを持って腕を振るうシェフもいますから、味わう側はもちろん、作り手側も、感度の高い人たちが集うのが東京だと言えるのではないでしょうか」。
東京には、焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶなどの多様な肉料理を提供するレストランがたくさんあり、数日間滞在すれば、日替わりでこれらを食べ歩くとこともできます。「日本焼肉 はせ川」もそのひとつ。「はせ川さんは、各地から東京に集まる和牛の中から厳選された新鮮な素材を丁寧に下処理し、和牛本来の味わいを提供してくれる、信頼のおける焼肉店です。しかも、伝統的な和食のスタイルを取り入れながら、和牛のおいしさを最大限に引き出す努力を惜しまない。そういった、真摯に和牛と向き合いながら、こだわりのメニューを提供してくれるお店は東京都内にいくつもあります。お気に入りの店を見つけ、和牛を存分に満喫することができれば最高ですね」と、小池氏は語ります。東京を訪れる際はぜひ、多様な肉料理を楽しむこと、全国各地から集まる個性豊かなブランド牛や肉の部位を食べ比べることをおすすめします。
希少部位を含む上質な和牛を用いた日本らしい焼肉を求め、国内外から多くの旅行者が東京を訪れます。写真は「日本焼肉 はせ川」。
肉や野菜がたっぷり入った汁物「沢煮椀」と焼肉を組み合わせた「松阪牛サーロイン 松茸の沢煮仕立て」。
多彩なメニューや部位を楽しめるからこそ、まず何をチョイスすればよいのか悩むところ。小池氏はそのヒントとして、肉の部位ごとの魅力と味わい方を教えてくれました。「上質な和牛のタンとハラミは、限られたルートでしか手に入りません。だから、それを食べる機会があるなら、逃す手はありませんね」。
まずはタンについて。「タンは流通量が少なく、特に和牛のタンが食べられる店は多くない」と言います。「歯切れの良い食感を楽しむために、焼き加減はウェルダンがおすすめです。焼肉などで自分で焼く場合は、切り込みが入っている方から焼きはじめ、肉の厚みがある場合は何度かひっくり返すと良いでしょう。薄切りなら、サッと短時間で焼きあげるとおいしくいただけます」。
日本焼肉 はせ川の「黒毛和牛黒タン」。舌の根元に近い部分のタンで、上品な霜降り(サシ)が入った美しいピンク色が特長。
ハラミは横隔膜にあたる部分で、筋肉の中まで美しく霜降り(サシ)が入っています。「焼肉などで自分で焼く場合は、強火で焼いて旨みを閉じ込めます。全体の8割くらいの時間を使って片面を強火で焼き、2割くらいの時間で片面をサッと焼き上げるのがコツです」と小池氏。「ちょっとした焼き方、食べ方のコツを押さえれば、より味わい深い和牛体験ができるはずです」。
見事な霜降り(サシ)が入った「黒毛和牛ハラミ」。
作り手と食べ手が磨き上げ、未来に繋ぐ、和牛の可能性
最近では、和牛の需要と評価の高まりにより「和牛の本質的なおいしさとはなにか?」を求める人も増えています。重層的な香りと旨み、余韻、食文化や作り手の意志が感じられるかどうか。和牛を取り扱うシェフや畜産農家は、単なる「おいしさ」にとどまらないこれからの和牛の可能性を、国内外から期待をもって訪れるゲストとともに追求し、磨き続けています。ぜひ東京を訪れて、あなたもその「和牛料理の進化を促すチーム」の一員となってください。
肉専門家
小池 克臣
こいけ かつおみ
あらゆる肉に精通する“肉の専門家”。1976年、横浜の魚屋の長男として生まれたものの、学生時代に焼肉のおいしさに目覚めて以来、家業を継ぐ道を選ぶ代わりに、肉の焼き方を追求する日々を歩み始める。和牛の生産・加工・熟成の研究に没頭しつつ、幅広いメディアで肉のおいしい食べ方、見分け方、名店の紹介といった情報を発信。食肉コンサルタントとしても活躍する。著書に「肉バカ。No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福」や「肉ビジネス ALL ABOUT THE MEAT BUSINESS」など。YouTubeチャンネル「肉バカ 小池克臣の和牛大学」も運営中。
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