世界中の魚が集まる東京で、市場と旬の魚料理を楽しむ
東京には、日本で最も大きく、世界中から多くの魚介類が集まってくる市場があります。街中には魚を扱う飲食店も多く並びます。お店ごとに仕入れる魚や調理方法、味付けなども多種多彩。食べる人が自分の好みや目的によってお店を選ぶことができるのは東京の大きな魅力です。こういった東京で体験できる“魚”について、水産業界に詳しく、魚食コンテンツも発信するながさき一生氏が語ってくれます。
500品目以上の世界中の魚が東京に集まる
東京に集まる魚の種類の多さは圧倒的です。公設の中央卸売市場「豊洲市場」には、日本はもちろん、世界中からさまざまな魚介類が集まります。その数、500品目以上。同じ種類でも産地ごとに銘柄が違う魚、干物や練り物などに加工された魚が並び、加工方法も地域それぞれに特徴があります。つまり、500品目という数の何倍もの魚の種類が豊洲市場には集まるというわけです。
こういった東京の市場や魚などの事情に精通しているのが、ながさき一生氏です。ながさき氏は「日本の魚をまるごと食べようと思ったら東京に来ればいい」と太鼓判を押します。
そもそも、ながさき氏が育った漁村があるのは、表層魚から深海魚まで、350種類以上の多くの魚が獲れることで知られる地域。物心ついたときから生活の中に当たり前に“魚”があったながさき氏は、現在、水産業界を取り巻く状況を改善させ、魚の魅力を広く知ってもらうための活動をしています。
魚介類を干した干物も地域によって特徴があります。
東京だからこそ、さまざまな味わい方で魚を体験できる
ながさき氏が、訪日旅行者にまず食べてほしいとすすめる魚料理は、やはりお寿司。とくに、下駄のような板の上にお寿司がのる「寿司下駄」を楽しんでほしいと話します。「さまざまな産地の魚が食べられることはもちろん、季節や旬によっても違った魚が提供される。寿司下駄1枚の上に東京に集まる魚の魅力がよく出ており、それが視覚的にもわかりやすい」ことが理由です。
さまざまな魚を一度に食べられる寿司下駄なら、魚の魅力を手軽に感じられます。
ちなみに、魚は鮮度が良いことばかりが魅力ではありません。「たとえば江戸前寿司で使われるマグロは、数日間熟成させることで旨みが出てくることもある」と言い、お寿司の知識を得れば、魚の奥深さを知ることもできるのです。さらに、寿司や刺身、海鮮丼で知られる生食だけでなく、天ぷらや煮物など、「焼く」「煮る」「揚げる」といった多様な調理方法で楽しめることも、日本で魚を食べることのおもしろさ。多くの飲食店のなかから、好みのお店や調理スタイルを選べることは東京だからこその楽しみ方のひとつです。
「焼く」「煮る」「揚げる」といった多様な調理方法で楽しめることも、日本で魚を食べることのおもしろさ。
また、東京で魚を“体験”するなら、多くの生鮮市場や飲食店が集まる築地場外市場・築地魚河岸で日本の魚文化の活気やにぎわいを感じることができます。場外市場の商店街で、古き良き日本の街並みや店員とのやりとりなどを満喫するのもよいでしょう。
※年末は、例年大変な混雑が予想されます。安心・安全のため、ご訪問前には必ず「築地場外市場」公式サイト(https://www.tsukiji.or.jp)の最新情報をご確認ください。また「築地場外市場」を訪問する際には、事前に「築地のマナー8箇条」(https://www.tsukiji.or.jp/guide/)をご確認いただくようお願いいたします。
切り身魚や干物など、見るだけでなく手軽に買うこともできます。
ながさき氏は、御徒町の大型魚介専門店『吉池』を訪れることもおすすめします。「吉池さんには、日本各地の珍しい魚も並び、多種多様な魚介類を一度に見られる」と述べ、東京の町の魚屋ならではの体験ができる楽しさを語ります。お店に一歩足を踏み入れるだけで日本の魚文化を一望できてわくわくした気持ちを駆り立ててくれるのです。
“人”の手によるシステマチックな流通が展開される日本の市場
このように、魚の魅力を熟知しているながさき氏は、大学卒業後、当時の東京の公設卸売市場「築地市場」で働いた経験があります。そのとき驚いたことが、市場ではいまだにIT化が進んでおらず、人海戦術であることでした。しかし、その人海戦術は、「世界でも類を見ないほどシステマチックにできあがっている」という見解をながさき氏は持っています。旬や産地、漁獲量が日によって大きく異なる水産業界のIT化は難しく、「むしろ“人”の手により切り盛りされることが理にかなっている」と言うのです。「たとえば、北海道から豊洲市場に届いた魚が、東京では買い手がつかないといったケースも起こることがあります。そんなとき、魚の流通を仲介する卸や仲卸の職人たちは、豊富な経験や知識、人脈を生かして需要がある他の地域を瞬時にあたります。そして世界屈指の鮮度管理の下、魚は新鮮な状態で必要な場所へと輸送されていくのです」。
「日本の市場は魚の食品ロスも少ない」と、ながさき氏はさらに続けます。「市場や魚屋で生の魚がはからずも売れ残ってしまった場合には、その品質でも許容される加工が施されたりもします。それでもまだロスが出るようであれば、家畜や養殖⿂などの飼料なども含めた、違う用途への転用が試みられます。魚の食品ロスを削減する知恵も日本ならではと言え、卸や仲卸の職人たちによって最適な場所に送り出されているのです」。
豊洲市場に集まる魚の数は世界でもトップクラスです。
新鮮で豊富な魚が集まり、流通を支える職人がいて、それを料理人が生かす。日本の魚文化を「見て」「食べて」「楽しむ」ことを総合的に体験できるのは、やはり東京という都市ならではの魅力なのです。
ながさき一生 ながさき いっき
(株)さかなプロダクション代表取締役フェロー/(一社)さかなの会理事長。おいしい魚の専門家。1984年、新潟県糸魚川市にある漁村「筒石」で生まれ、漁師の家庭で家業を手伝いながら18年間を送る。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売会社で働き、同大学院で修士取得。2006年からは魚好きのコミュニティ「さかなの会」を主宰。メディアで食としての魚を分かりやすく伝えている。著書『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める本』ほか。
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