和食の作法​

2025年12月18日

四季の恵みと食材への敬意から生まれた「和食」は、日本が誇る食文化です。 
伝統と多様性が共存する東京は、その魅力を体験するのに最適な場所。 
和食をより深く味わうための作法と、「おもてなしの心」を紹介します。 

和食体験をもっと深める「食事の作法」

日本の食文化「和食;日本人の伝統的な食文化」は、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、世界中から注目されています。その魅力は、味だけでなく、器の選び方から配置や所作の一つひとつに「思いやり」と「美しさ」が込められていることにあります。
和食の正しい作法を知ることは、単なるルールを覚えることではなく、料理人の心やおもてなしの精神に触れる第一歩でもあります。「こうしなければならない」という決まりだけではなく、文化を尊重し、心を通わせながら食を楽しむための形。和食の作法を知って、和食をもっと楽しんでみませんか。

和食の作法を知ることで、料理の背景にある料理人の心やおもてなしに触れることができるでしょう。

一汁三菜に込められた美意識

和食の基本は「一汁三菜」。ご飯、汁物、主菜、副菜がバランスよく並ぶ構成です。その配置にも意味があり、左にご飯、右に汁物、中央に主菜という並びは、右利きを基準とし、箸を伸ばしやすくする工夫でもあります。 
美しく整った配膳は、食材や召し上がる方への敬意を表すもの。料理を美しく見せることを大切にする日本人の感性がそこに宿ります。器を並べるだけでなく、その向きや距離にも意図があることを知れば、和食の奥深さをより感じられるでしょう。整った配膳には「食材を敬う心」と「美を楽しむ文化」が共存しているのです。

ご飯、汁、主菜、副菜が並ぶ和食膳。配置の美しさに、日本人ならではの繊細な感性が宿ります。 ©️江戸料理文化研究所

箸の扱いは作法であり文化への敬意

日本の食卓に欠かせない箸。その扱い方は、単なる食の作法を超えた、人への思いやりが表れます。箸で料理を受け渡す「箸渡し」や、料理を突く「刺し箸」、迷うように料理の上で動かす「迷い箸」は、日本ではどれも無作法と言われる所作。これらは見た目に美しくないだけでなく、葬儀で行われる行為などを連想させるため日本では避けられています。 
器の代わりに手を添えるのはマナー違反です。食事中に箸を置くときは手元にある箸置きを使い、小ぶりの器は手に持ち食べるのが基本。
麺類以外の料理は音を立てず、落ち着いた動作で食べる、その丁寧な所作が、食事をより優雅に見せます。箸や食器の扱い方は、作法であると同時に、文化への敬意の表現でもあるのです。 

左から、箸で料理を受け渡す「箸渡し」、料理を突く「刺し箸」、迷うように料理の上で動かす「迷い箸」。 どれも箸づかいのタブーとして、日本では好まれない行為です。

ゆっくりと味わう「間」の食文化

和食は「温かいうちに」食べるのが基本。また、お椀や小鉢を手に取って食べることは、日本ではマナー違反ではなく、むしろ周囲に丁寧に食べている印象を与えます。すべてを一気に食べず、料理に意識を向けて少しずつ味わってみてください。料理人が込めた季節感や味のバランスを感じることができるでしょう。日本では「早喰い」を避け、「間を楽しむ;料理を食べる行為そのものだけでなく、料理が運ばれるまでの時間や、会話がふっと途切れる瞬間も含めて味わう」ことが美しい所作とされています。食事するという行為の時間の流れの中にこそ、食を大切にする日本人の美意識が息づいているのです。 

料理を丁寧に味わうひととき。「間」を楽しむのは和食ならではの美意識。

「ごちそうさま」に込められた感謝

食事が終わったら、ご飯粒を残さず、器を丁寧に元の配置に置きましょう。あまりお腹が空いていない場合や小食の方は、予め、量をスタッフに確認し、多くは食べられない旨を告げておくのが、残さずにいただくためのマナーでもあります。箸は箸置きに戻し、器は重ねずにそのまま置いておきます。器を丁寧に扱う所作には、食材を育んだ自然、調理した人、スタッフの人々、ともに食事を楽しむ仲間への感謝が込められています。そして最後に「ごちそうさまでした」と言葉を添えることで、食事は単なる行為ではなく、心の交流へと変わります。

食後は「ごちそうさまでした」と食材や作り手に感謝を表します。

姿勢がつくる「美しい食事」

和食の場では、姿勢もまた「美しい食事」の一部です。座敷では正座が好ましいですが無理はせず、足を崩しても大丈夫です。足を下ろせる掘り炬燵式の店も多くあります。座布団や畳の縁は踏まないように気をつけましょう。椅子席では背筋を伸ばし、落ち着いて食事に向き合います。それだけで、料理の味わい方が変わるはず。料理人の動きや料理の提供タイミングを尊重し、ゆったりと食事を楽しみましょう。肘をついたり、箸を持つ逆の手を下に下ろしたまま食べることは控え、正しい姿勢で箸を運ぶと、自然と心も整っていきます。その所作が、食の時間をより豊かなものにしてくれることでしょう。

和室での食事風景。姿勢の美しさが、食事の時間をより豊かに彩ります。

心で味わう和食の文化

和食の作法は、「正しく食べるため」ではなく、「料理と作り手を尊重するため」のもの。ほんの少し意識するだけで、食事は文化体験へと変わります。 
「箸の扱い」「器の配置」「姿勢」、その一つひとつに、日本人の心が感じられるでしょう。東京での食体験を通じて、味わうことの奥にある心の交流を感じてみてください。きっと和食が文化そのものであることに気づくはずです。 

「料理と作り手を尊重する」のが和食の作法の基本。

監修
諏内えみ すない えみ
マナースクールEMI SUNAI 代表。マナー、ふるまい、会話、社交、テーブルマナーやパーティマナーのレッスン等を行う。

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