江戸野菜の収穫体験と東京産クラフトジン蒸留所見学
世界中の多様な食が集まり、発展させることで、独自の食文化が生まれる街、東京。
江戸の伝統野菜をはじめとした様々な食材の産地でもある、東京。
東京の気候風土が生んだ自然の恵み、
食材の一つひとつに込められた生産者の想いやストーリー、
伝統の技法と革新的なアイデアを凝らし、東京の食文化を紡ぐ料理人たち。
東京ならではの「ガストロノミーツーリズム」が、
きっとあなたの日常に、新しい気づきを与えてくれるでしょう。
ガストロノミーツーリズムとは
その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、
その土地の食文化に触れることを目的とした旅のこと。
知って、学んで、味わう時間が、あなたの旅を彩ります。
江戸野菜の収穫体験と東京産クラフトジン蒸留所見学
世界有数の大都市、東京。
そんな東京の街中にも、昔ながらの野菜を作り続ける農家の方、
サステナブルなジン造りに取り組む方など、様々な想いを持つ食の生産者の方々がいます。
今回は、日々の生活の中では気がつかなかった、意識していなかった
一つ一つの食材の背景や生産者の想いに触れる素敵な食の旅にでました。
アドバイザー(写真左)
島田 哲也
ビストロ「イレール 人形町」オーナーシェフ
23才で渡仏し、パリ「オランプ」(1ツ星)、「ルカ・カルトン」(3ツ星)、「アルページュ」(3ツ星)にて研鑽を重ね、その他、パティスリー、ブーランジェリーなどで修行。
帰国後は池袋、恵比寿でシェフを経て、2013年にビストロ「イレール・人形町」をオープンし、以来オーナーシェフを務める。
“日本食材”を用いたフランス料理が話題となり、テレビ出演や雑誌での掲載経験多数。
アドバイザー(写真右)
田代 由紀子
料理研究家
野菜ソムリエプロ・江戸東京野菜コンシェルジュとしてコラム執筆、レシピ提案、セミナー・料理教室講師として活動。
野菜・果物の魅力を伝える活動を行っている。
東京地域のローカル野菜
「谷中ショウガ」、「練馬ダイコン」に「内藤とうがらし」。こんな名前の野菜をご存じでしょうか。これらは皆、ここ東京の地で愛されてきた野菜たちです。
旅の最初の目的地は、東京で古くから食され、現代まで受け継がれてきた野菜の栽培に取り組まれている「ファーム渡戸(わたど)」さん。
有楽町線の平和台駅から歩いて10分ほどの場所に広い畑が広がります。
江戸東京野菜にかける渡戸さんの想い
農園主の渡戸さんから、東京の伝統野菜(江戸東京野菜)についてお話を伺いました。
「江戸東京野菜」とは、種苗の大半が自給または、近隣の種苗商によって維持されてきた 昭和中期までの東京の在来種や、在来の栽培法に由来する野菜のこと※。
農園の入り口にある野菜直売所には、泥がついたままの立派な練馬大根や、かごからこぼれるほど大きな葉っぱの芯取り菜(シントリナ)が、所狭しと積まれています。
それらの野菜は、その一本一本、一束一束がいい意味でバラバラで個性的。
まさに「今、隣の畑から採ってきた!」といわんばかりの顔つきの野菜が並びます。
大きさや形が不揃いになりがちで栽培も難しい「江戸東京野菜」。
それでも、練馬の地で、古くから繋がれてきた貴重な野菜を守っていきたい。
渡戸さんは、そんな想いで江戸東京野菜の栽培に取り組んでいるそうです。
今回は、渡戸さんのご厚意で、ごせき晩生小松菜の収穫を体験させていただきました。
収穫した傍から、土と濃い緑の香りが。
青々とした、大きな葉っぱが外側に向かって自由に広がっている様子に力強い生命力を感じました。
※出典:JA東京中央会HP
東京産クラフトジンを生み出す蒸留所へ
近年、その土地をイメージした配合や、ゆかりの原料でつくられるお酒が世界的なブーム。
実は東京にもそんな特別なお酒を造る蒸留所が生まれています。
次なる目的地として、その中のひとつ、蔵前にある「東京リバーサイド蒸溜所」に向かいました。
大江戸線・浅草線蔵前駅の近く、隅田川へも徒歩圏の街中を歩むと、ミントグリーンの日除けとシャッターが目を引く、蒸留所の入口が見えてきます。
周辺には、古い倉庫や工場跡をリノベーションしたカフェやバーも点在。
この蒸留所が入るビルも、以前は印刷所だったそう。
ビル1階のミントグリーンの日除けの下には、クラフトジンをテイクアウトできるスタンド。
その奥には、銅製の蒸溜器が見えます。
今回は、蒸留所を運営するエシカル・スピリッツのバーテンダー兼蒸留家 宮島さんに、ジンの製造工程からご案内していただきました。
ジンを通じてサステナブルを知る
ジンは、穀物由来の蒸留原酒にジュニパーベリー(セイヨウネズの球果)とボタニカル(風味付け用の原料)で香り付けをし、再蒸留して仕上げられます。
実はこの蒸留所の原料のメインとなるものは、カカオの殻やコーヒー粕など、食品の加工過程で生みだされ、不要であるとして廃棄されてしまうもの。
例えば、東京リバーサイド蒸溜所の代表的なジンである「LAST ELYSIUM」には、日本酒造りの行程で大量に生まれる酒粕を使用しているそう。
日本酒造りで使用されるお米のうち、酒粕となるのは全体の3-40%と言われていますが、酒粕の算出量と消費量はバランスしていないため、廃棄されてしまうことも少なくありません。
そんな現状に対して、東京リバーサイド蒸溜所さんでは、廃棄されていたはずの酒粕焼酎を購入し、蒸留酒にアップサイクルさせる取り組みを通じて酒粕に新たな経済的価値を与えることで、日本酒の酒造、米農家、ジンの蒸留所をつないだ循環経済を生み出すことを目指しているそう。
「LAST」という英語には「最後の」という意味のほか、「続く」という動詞の意味がありますが、日本酒造りの最後に残された酒粕が、次の命へと続いていくという意味を、自社のジンに込めているとのことでした。
蒸留所を見学した後は、ビルの2階にあるバーダイニング「Stage」に移動。
1階で製造された3種類のジン試飲し、改めて、ジンに生まれ変わる前の食材の姿を思い浮かべながら、それぞれのジンの香り高さを楽しみました。
東京という都市でチャレンジする魅力
どこか特定の地域の食材に関わらず、全国の魅力的な素材をフラットに受け入れることができるのが東京の魅力だと、エシカル・スピリッツの宮島さんは言います。
大きな日本経済の流れの中で廃棄されるはずだったものがジンとして生まれ変わり、再び消費されていく。
その循環の拠点として、東京という場所は最適だと思っているとのこと。
世界中からあらゆるものが集まり、そして日々消費されている日本最大の経済都市・東京。
そんな東京で始まった、食と経済の循環を目指すチャレンジ。
蒸留家の想いが込められたクラフトジンの味わいを、多くの人に知ってもらいたいと思いました。
食材にしっかり向き合う時間
「東京リバーサイド蒸溜所」を発ち、最後は都内のキッチンスタジオへ。
日本橋人形町の自然派ビストロ「イレール人形町」のオーナーシェフ、島田さんを講師に招き、渡戸さんが栽培した小松菜を実食しました。
今回のメニューは「ごせき晩生小松菜のポタージュスープ」です。
島田さん曰く、今回採れたてのごせき晩生小松菜のおいしさをさらに引き立たせるために、通常は入れないシソを加えたとか。
食材の個性をより活かせるように、さらに参加者が自宅で作ることも考えてレシピの考案に当たり思考錯誤を繰り返したそう。
私たちが、一つの食材の個性に対してここまで深く向き合って調理することは、よほどの料理好きでもなければ、あまりないことでしょう。
日常ではあまりありませんが、考えてみれば小松菜一つ取ってみても、いろいろな種類があることに今更ながら気がつきます。
食材の個性にひとつひとつ向き合って、最適な料理方法を探求する。
プロの料理人のこだわりが面白く、もっとお話しを聞きたくなりました。
食を通じた冒険の旅
普段何気なく食べている食材や料理、その一つ一つのビハインドストーリーに触れる旅。
スーパーで食材を選ぶ時間、馴染みの飲食店で食事を楽しむ時間。
意識はしていなかったけれど、そこにある背景や、生産者から込められたメッセージに思いをはせることで、いつもの時間がいっそう素敵な時間に変わります。
それは、何気ない日常の中にある、未知との出会い。
さながら、食を通じた冒険の旅。
そんな食の旅に、あなたもでかけてみませんか。
(本記事は、2023年度に東京都で実施した東京におけるガストロノミーツーリズムの魅力発信事業の実施レポートです。)
訪問先
ご協力いただいた施設・お店をご紹介します。
ファーム渡戸
ファーム渡戸さんは練馬区平和台で、年間約30種類の新鮮野菜を生産直売しています。
練馬ダイコン・ごせき晩生小松菜・内藤トウガラシ等の江戸東京野菜は
約10種類を栽培しています。
エシカル・スピリッツ株式会社 東京リバーサイド蒸溜所
「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」を目指し、
未活用素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営する蒸留ベンチャーです。
“東京リバーサイド蒸溜所”はエシカル・スピリッツが東京蔵前に設立した、世界初のエシカル生産及び消費に特化した再生型蒸留所です。
https://ethicalspirits.jp/ (Japanese only)
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